集合住宅の工事において、光回線導入工事がスムーズに行かない場合があります。
戸建だと、すんなり工事が済んでしまいます。
戸建ての場合、建物の所有者イコールネット契約者本人(またはその家族)であることがほとんどで、工事の了解も得やすいのが一因です。
集合住宅の場合、ほとんどの居住者は建物オーナーではなくただ入居しているだけですので、工事の許可を得る必要があるからです。
その他にもいくつか理由があります。
今回はその理由について簡単にご紹介しましょう。
私は光回線の開通センターに勤めていたこともありますので、個人法人問わず様々なお客様とお話ししたり工事担当者ともやり取りしたことがあります。
極めて特殊なケースもあれば、一般的なマンションでも工事が上手くいかない事があるんだ、と驚いたりしたこともあります。
いくつかの理由について説明していきます。
※あくまでも一般的なケースであり、特定個人の案件を指すものではない点をご了承下さい。
もしあなたが「サービス導入に時間がかかる」と言われたからと言って、以下と同じケースだと断定はできません。
・宅内や建物に原因があって工事できない理由(再度工事日程の調整が必要です)
・建物の外に原因があって工事ができない理由(工事可能になるまで待つしかありません)
なお、工事の日程調整はできたけど、理由があって延期する場合はこちらを参照下さい。
目次
すぐ工事ができない理由:宅内・建物が原因の場合
宅内部分や建物自体が原因で工事ができないケースです。
建物のオーナーの許可が下りない
最も多いのが、オーナーが自分の建物に穴を開けたくないと考えている場合です。
具体的には穴開けによる入線工事、壁面への配線や光キャビネット設置用のビス留めを許可してもらえない場合です。
マンション、アパートの持ち主なら誰でも自分の建物に傷をつけたくないと考えます。建物はできるだけキレイな状態を維持したい。不必要な穴開けはできるだけ避けたいのです。
また、管理会社が許可しない場合もあります。
オーナーが管理を全面的に任せていて管理会社がNGを出すというケースです。オーナーが反対していないのに管理会社がダメって言うなんて理不尽ですよね。一括借上の建物などにありがちですが、管理会社の意向が優先されてしまうのです。
オーナーに直談判できればよいのですが、そういう物件に限ってオーナーに連絡する手段がなかったりします。
また、既存の設備で間に合っている場合。わざわざ新しく工事をする意味がないと考えているオーナーもいます。
「インターネット回線なんてどれも同じでしょ。なんでNTTとKDDIとソフトバンクとあれもこれも工事しなきゃならないんだ?」
と思うわけです。
お住いのアパート、マンションのオーナー様がこういう考えの方だったら、根気強く説得していくしかないですね。
私だったら、「複数の設備があった方が選択肢も増えて入居メリットが増えるから新しい人も部屋を借りやすくなりますよ」などと説得してみます。
ある程度交渉してみて、どうしても無理だった場合は、残念ですが、物件から引っ越すことを検討した方が賢明かもしれません。
配管が詰まっていたり破損している為入線できない
建物内へ光ケーブルを入れる方法は3種類あることは紹介しましたが、穴開け許可は貰えたのに、配管が潰れていて光ファイバーを通せないとか、配管の途中に穴が開いていてそこに引っかかる。無理に通そうとすると既存配線や光ケーブルを破損させてしまう恐れがある場合などです。
工事業者がその場で判断して諦めざるを得ないケースです。その場で工事ができない理由を説明してくれます。
工事担当者ができないと言うのなら、これはどうしようもないですね。
しかし、諦めきれないですよね。何とかならないものでしょうか。
ぐれ太
今どきの工事業者は根性が足らんぞ!
ちび太
根性論で解決したら苦労しないよ(笑)
管理会社がマンションを管理している場合、相談してみることをお勧めします。建物に関することは、管理会社かオーナーの役割ですからね。
理解のある管理会社だと、壁内の配管工事を手配してくれる場合もありますから、諦めるのはまだ早いですよ。
配管を新設するスペースが壁の内部になかったりして、どうしても光ファイバー線を入れられないと判明したら、諦める時かもしれません。
リフォーム時に電話の差込口を埋められてしまった
リフォーム業者が何を勘違いしたのか、電話線の差込口(モジュラージャック)を埋めてしまう事も少なくありません。
これは主にVDSL方式という、一昔前の電話線を使ったネット回線の建物の場合に見られる事象です。ADSLというネット回線サービスが、かつてブロードバンドの先駆けとして普及していましたが、その頃と同じ設備で光回線を接続している場合ですね。
築20年未満の比較的新しい建物であれば、光配線方式で壁の内側に配管されており、各部屋には「光コンセント」がついていることが多いので、このトラブルはほとんど発生しません。
光コンセントはほとんどの場合、壁面に電気のコンセントと同様のコンセントカバーが取り付けられていて、そこにつなぎ口があるからです。
電話のつなぎ口であるモジュラージャックは、小さくて壁に埋め込まれているタイプが多いので、リフォーム業者がうっかり気づかずに塗り潰してしまうんですね。
まずは差込口を探して下さい。
いくら探してもモジュラージャックが見つからない場合、リフォーム業者へご相談下さい。
(光コンセントが見つかったら、その必要はありません)
特にリフォーム業者に落ち度があるなら、管理会社に相談してみましょう。交渉の余地は十分にあります。再リフォームをしてもらい、無事に光コンセントが見つかれば、念願の高速回線が実現できるかもしれません。
集合装置の空きポートがない
集合住宅のインターネット設備と言えば、「MDF室」の中にある「集合装置」です。
集合装置は、建物の外から引き込んだ光ファイバーケーブルを、いったんつないで各戸へ分配する装置です。引き込む線はたいてい一本ですが、ここから全戸に向けて分岐させてつなぐ、いわば建物の外と内を分ける境界線に当たります。
※集合装置の一例
一般的なマンションにはMDF室という、配電盤などの設備を収容した部屋があります。(アパートだと壁に直付けされている場合が多いです)
その中に、インターネット用の集合装置が設置されています。通称「ラック」と言い、外部から引き込んだ一本の光ファイバーケーブルを、各戸へ分配するための装置です。
この集合装置ですが、少し前のVDSL用は16分配、8分配できる装置がありました。
全世帯で20戸のマンションに16ポート(つなぎ口)の装置が設置されていたら、どうなるか。
4世帯分足りませんよね。
かと言って、もう一台8ポートの集合装置を増設しても、全部埋まらないわけです。
昔はマンションの全世帯がネットを使うなんてあまりなかったものですから、それほど深刻な問題ではなく、対処されずに20世帯の建物に16ポートの集合装置なんて当たり前でした。
かつてフレッツ光利用者が急拡大した時期は、設備投資が全然追いつかず、また費用も決して手軽ではなかったこともあり、ポート数が不足している建物はけっこうありました。
時代は変わって、今や老若男女がネットをしています。お年寄りだからやりませんなんて言ってられません。需要見込みの甘かった時期に集合装置を設置した建物はまだまだ残っており、光回線を申し込んでも装置の空きポートが全部埋まっている、なんて状況もあり得るんですね。
新規で申し込みたい方がいても、設備上すぐに利用できないケースです。
もちろん、需要があるなら装置を追加してもいいのですが、たった一軒の申し込みで動いてくれるかは、NTT側としてもやはり検討要なのですね。
決して一軒のみの注文だから動かないというわけではなく、現実的には設備増設に時間がかかるということ。
ちなみに、現在の光配線方式での集合装置は、まず第一スプリッタで4分岐させて、さらに8分岐する第二スプリッタを使う方式になっているため、臨機応変に対応できるようになっていますね。
分譲マンションの管理組合が設備導入を許可しない
分譲マンションにありがちなのが、このケースです。
建物全体のネット設備はケーブルテレビ会社と契約していてネット環境が整っているので、新たに増設する必要性があまりない場合です。
CATV設備を売りにして販売したマンションだと、なおさら新規設備を導入するハードルが高くなります。
分譲マンションを管理する管理組合が積極的に動かないこともよくあります。入居者全員が納得しない限り設備導入が賛同を得られないことも。
全入居者が高速インターネットを使いたいという積極的な方々なら前向きに考えてくれるでしょうが、高齢の入居者だと「インターネット? いらないよ!」と無下に拒否反応を示し、それで管理組合の動きも完全にストップ。
「元々(CATVのネットを)使えているのになんで余計に金を払わなきゃいけないんだ?」で、ジ・エンド。
なかなか難しい問題ですね。
テナント等で工事作業に必要な許可を得られない
これは個人宅ではほとんどありません。どちらかと言うと、店舗などに光を導入する際によく発生します。
部屋内まで光ケーブルを引きたいが、配線ルートを確保したり作業をする上で、隣接する別の部屋へ立ち入らないと工事ができない場合です。
主にテナント等が入っているビルで発生する事案で、立ち入り許可さえ得られれば工事は可能ですが、現地調査が必要ですのでその分工事完了まで長引いてしまうのです。
おおむねNTT側で交渉を行い(協力を求められることもあります)、立ち入り許可が得られれば工事は可能ですので、根気強く待つしかありませんね。
普通のアパートでも似たようなケースがあります。
工事の際、アパートの外壁で作業したいのに、敷地が狭くて隣家の庭に入らないとハシゴがかけられず作業ができない。でもお隣さんが非協力的だった場合です。
また、お隣の土地所有者が多忙な方で、なかなか連絡がつかない場合も難航しますね。
ただしこの場合、お隣さんの協力さえ得られれば工事ができますし、短時間で済む事案ですので比較的容易に解決できるでしょう。
すぐ工事ができない理由:屋外が原因の場合
次は、建物の外側に理由がある場合です。
これはほとんどの場合、入居者に責任がない場合です。近隣エリアの環境に原因がありますので、許可や条件が整うまで待つしかありません。
自宅近くに光ファイバーの幹線が来ていない
山奥に住んでいるわけでもないのに、たまたま周りが畑に囲まれていたとか加入者が少ないエリアで、電柱に光ファイバーの幹線がなく光ケーブルを持ってこれないケースはよくあります。
他に、元々畑だった場所を宅地造成して、住宅が一気に増えた時など。
畑に光回線は使いませんので、幹線も必要ありませんでした。ところが急に戸建住宅がどんどん建ち始め、たくさんの光回線を敷かなければいけなくなった。
新しい住宅地に早い段階でマイホームを購入した場合、まだ周辺の設備が整っていない場合があり、スムーズに光回線を引けないこともあるんですね。
この場合は、それほど時間がかからずにNTTも対処してくれます。なぜなら、需要が増えるのはNTTにとっても大歓迎だからです。
また、一見すると近くの電柱に光クロージャという箱がついているのに、自宅まで引っ張って来れないケースもあります。
これは、光ファイバーを敷設するのに「光配線区画」というエリア単位で行うというNTTの決まりがあり、たとえ近くに設備があっても光回線を持ってこられないためです。
ちょっと納得が行きませんが、NTTが定めたルールですのでどうしようもありません。
解決方法は、
・幹線を物件の近くまで延伸してもらう(→数ヶ月かかる)
・途中に電柱を設置して光ケーブルを延長させて住宅までつなぐ(→費用が発生する可能性大、また電柱を設置する場所の土地所有者の許可が必要)
もちろんNTT(や他事業者)が提案し実施します。最終的に不可能な場合もあります。
離島
たとえ離島といえども、光回線を敷くことは不可能ではありません。
ただし、時間がかかる場合が多々あります。
光ファイバーが河川や国道をまたぐ
国や自治体などの許可を得る必要があり、場合によっては非常に時間がかかることがあります。
時間はかかりますが、最終的には可能になるケースが多いのですぐ諦める事案ではないかと。
団地に光回線を導入する場合
URの許可が必要です。
「模様替え申請」という書類を提出する必要があり、これも調整に時間がかかります。
レアケースの話ばかりしていたらきりがありませんね。
みなさんのご自宅が無事スムーズに工事完了することをお祈りしています。